大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和31(オ)610 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告理由について。

原判決の確定したところによれば、(一)上告人が昭和二八年六月二七日夜福井

県大野市の自宅においてDからその実弟E所有名義の山林の立木を不法に伐採搬出

する者があるので、これを差し止めるよう相談を受けたこと、(二)そこで事情を

聴取した結果、右紛争は右山林の隣地の所有者であるF外二名との間にからまる山

林境界の争に基因するものであることを知り、Dに対し右伐採搬出を差し止めるに

は、所有権確認の本訴を起し、伐採及び搬出禁止の仮処分を求めるよりほかない、

といつてその方法を教示したこと、(三)その後において上告人は右紛争の相手方

であるF外二名から右紛争事件に関し委任を受け、その代理人としてEを相手方と

して福井地方裁判所大野支部に対し妨害排除の仮処分の申請をなし、また所有権確

認並びに妨害排除請求の訴を提起したことは、当事者間に争ない事実であつて、上

告人が事実の真相であるとして自認するところでもある。

上告人は、上告理由として、前記(一)(二)の事実は、いまだ弁護士法二五条

一号にいわゆる「相手方の協議を受けて賛助し……た事件」に該当しない旨を主張

する。

しかし、前記(一)の事実は右法条にいわゆる「相手方の協議を受け」に該当す

ることは、常識上明白であるのみならずこれについては上告人自身も別段異議を述

べていないのである。ただ問題は、前記(二)の事実が右法条にいわゆる「賛助し」

に該当するかどうかの点である。弁護士が依頼者から法律事件の協議(相談)を受

けた場合、何等かの理由で途中からその協議を謝絶し、又は終りまで協議を受けた

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がこれに対し何等意見を述べなかつたときのごときは、右法条にいわゆる「相手方

の協議を受けて賛助し」に該当しないものというべきである。だが、前記(二)に

掲げるように法律事件の協議に対し、事情を聴取した結果具体的な法律的手段を教

示する段階に達すれば、一般的にいつて右法条にいわゆる「賛助し」に該当するも

のと認めるを相当とする。なぜならば、通常弁護士が依頼者の相談に対し、ある具

体的な法律的手段を教示することは、当該事件は対策としてその手段方法を採るこ

とによつて有利に解決さるべきことの意見を陳述するに外ならないからである。

論旨はさらに、原判決において、上告人がDから相談を受けてその事情を聴取し

た上伐採搬出禁止の法律上の手段を具体的に教示したことは、他に特段の事由のな

い限り、前記法条第一号にいわゆる「相手方の協議を受けて賛助し」たものとなす

のが相当であるとしながら、その「特段の事由」の何であるかについて判文上言及

していないのは理由不備の違法がある、と主張する。

しかし、原判決は、前記(一)(二)の事実があれば協議を受けて賛助したこと

になるが、そのほかにさらに特段の事由があれば賛助したことにならない場合があ

る趣旨を判示したものであつて、もとより正当な見解である。そして、原判決は最

後のところで、本件においては「他に特段の事由と認めうべき事由のない」ことを

判示しているのであるから、それ以上所論のように「特段の事由」が何であるかを

判示する必要のない事件である。これに反し、もし原判決が本件には「特段の事由」

があると判示している場合には、その特段の事由は具体的に何であるかを全然判示

しなかつたとすれば、理由不備の違法を来たすであろう。それ故、上告理由はすべ

て採ることを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

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裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官真野毅は退官につき署名押印することができない。

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

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